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南千住  瓦斯タンク朦朧 (もうろう) として

南千住にある東京ガスのガスタンクを、隅田川越しに遠望しました。
永井荷風の日記 『 断腸亭日乗 』 1937(昭和12)年7月7日付に、このガスタンクを遠望した記述があります (もちろん、建て替えられていますが)。

裏手の屋根上に出でて見るに、立ちつづく屋根のはずれに石浜の瓦斯タンク朦朧 (もうろう) として影の如く、南千住辺の燈火東雲の空の下に明滅す。
c0080357_1882977.jpg

荷風は、前年の玉の井通いに続き、今度は吉原を熱心に取材してます。
夏の夜、吉原の妓楼の屋根に上り、南千住方面を見渡したのが、この一文。
写真は、荷風の視線とは反対側から見た風景です。
荷風の文中に 「石浜」 とありますが、写真中央をよ~く見ると、「石浜神社」 の社殿が写ってます。

それにしても、何とまあ、ただのガスタンクでさえ荷風の目を通すと絵画に大変身してしまいます。
荷風は、セメントと鉄でできた無機質な建造物が大嫌いでしたが (例えば、木造の橋から架け替えられた鉄橋など)、それが風景に溶け込んでいる場合は、話は全く別。
三島由紀夫は、荷風を
「最も下品なものを最も美しく描く」
と評しましたが、瓦斯タンクの文章は、まさにその好例です。
そう言えば、『 墨東綺譚 』 では、玉の井のドブもヤブ蚊も美しく描かれていますね。
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by muffin-man | 2008-02-19 18:16 | 三ノ輪/南千住/東日暮里/下谷 | Comments(18)
Commented by nen_randir at 2008-02-19 18:56
こんばんは!
下品なものを美しく描く、、、
眼に映ったものを表現するのって難しいですよね。
写真もそんな気がします。
ただ写すだけでなくてその場の空気を感じる写真を撮りたいものです。
マフィンマンさんの写真は下町の雰囲気が良く伝わってくるんですよね~(^^♪
Commented by Rambler5439 at 2008-02-19 20:20 x
堤小学校のあたりからお撮りになったのでしょうか。気合いの入った一枚ですねー。
オイラはいつも東向島からの帰り、白鬚橋を渡ったあたりから撮るのですが、
やはり手抜きはダメだなあと反省させられました。
Commented by lucca-truth at 2008-02-19 21:17
こんばんわ
隅田川がきらきらときれい!
ガスタンクの写真が風景になってますね。
「下品な物を美しく描く」、荷風先生すごい文章力ですね。
Commented by aoi_color at 2008-02-19 23:29
当時のガスタンクこんなメロン色の球体では無いでしょうね。
石浜神社は泪橋辺りに案内があるので気にはしているのですが中々よる機会がありませんでした。
Commented by rrb at 2008-02-20 09:13 x
おはようございます。

>朦朧 (もうろう) として影の如く、南千住辺の燈火東雲の空の下に明滅す
ん~…色々な状況が目に浮かびますね。
ぼんやりと怪しい物体が浮かびあがって見えたのでしょうか?
文字の表現(文章)って、とても想像を掻き立てる…。
この瓦斯タンクが絵になる瞬間なのでしょうねぇ。
「きっとこう見たに違いない…」という撮り方をしてみたくなってきました(^^)
Commented by kokoko1965 at 2008-02-20 17:29
川沿いの 工場地帯とか 日が暮れてから 車で通ると なんともいえない 恐怖感を覚えるんですよね・・・。あれはナンなんでしょう・・・。 人気の無さ 無機質な鉄の塊・・・。 これも東京の思い出の一つです。
ぽち。
Commented by iza-nagi at 2008-02-20 23:37
ガスタンク・・・ガスタンク・・・
ガスタンクって、なんで丸いんでしょうね~?
なにか訳があったような気がしましたが・・・・・
「最も下品なものを最も美しく描く」ですか~っ
ガスタンクのある風景も、美しいものだと言われれば美しいですよネ!
Commented by haru-155 at 2008-02-21 21:16
今晩は!風邪↑いけませんですね~。。お大事になさって下さいね!

なるほど~・・>「最も下品なものを最も美しく描く」ですか!!いろんな物の中に美は隠されているんですね!って自分のような凡人はわかりやすい美でないと目に飛び込んで来ないのが寂しいのですが・・これってやはり感性なんでしょうねぇ・・

やや黄昏れ始めた灰色の空の下、銀色の漣の向こうのガスタンク、とっても魅力的だな~って思います・・淡い日差しの下での陰影がいいですね~!

Commented by korotyan27 at 2008-02-21 23:18
こんばんは、
昔の風景を追体験するような文ですね。荷風先生の時代は経験して、感じて書くこと以外にありませんが、
現在でも文章の表現が追いついているかどうか。
街が変貌した現在に先生が生きていたらどんな表現になるのでしょうね?
↑お体に気をつけてお大事になさってくださいませ。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:01 x
nen_randirさん
写真作法でよく「記憶色」なんて言葉が使われますが、よく考えると、妙ですよね。
記憶ってのは、人によって異なるわけで、10人いたら10の「記憶」があるはずですもんね。
結局、撮影者が被写体を見てどう感じたかを忠実に表現するのが写真の作法なのかな、と思いますが、これが難しいんですよね~。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:02 x
Rambler5439さん
ご明察です。テントハウスが建ち並ぶ、首都高下のコンクリ土手(遊歩道)から撮りました。
レンズは、タムロン28-75ミリですが、いまだに慣れません。
K10Dの手ブレ防止機構もこのレンズには何故か効かず、シャープに撮れません(この写真は、土手の手すりにガッチリもたれながら撮りました)。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:02 x
lucca-truthさん
最近のガスタンクは、このように球形のが多いように思います。
昔のガスタンクは、円柱形でしたよね。
この時間帯は、まだ夕暮れにはだいぶ時間があるので、ちょっと中途半端な写真になってしまいました。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:03 x
aoi_colorさん
この撮影後、同じガスタンクの昭和27年撮影の写真を見る機会を得ましたが、当時は球形ではなく、円柱形でした。
戦争を挟んでいるので確かなことは言えませんが、ひょっとしたら荷風が見たのは円柱形だったかもしれませんね。
石浜神社界隈は交通の便があまりいいとは言えず、訪れる機会がなくても無理からぬ話ですよね。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:04 x
rrbさん
当たり前のことですが、荷風の文章を読むと、当時はいかに低層の住宅が建ち並んでいたかということを思い知らされます。
そんな中に、瓦斯タンク。さぞかし、巨大に映ったことだろうな、と思います。
これも当たり前の話ですが、今では絶対に荷風が見た通りの絵は撮れません。残念です。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:04 x
kokoko1965さん
恐怖感の源は、昼夜の人口の違いなのではないでしょうか。
もっとも、最近は従業員がとても多い工場というのも少なくなったので、日中通っても人けがないということがありますよね。
一方で、最近は「工場萌え」なんて言葉も生まれ、夜の工場を愛でる人も増えているようですね。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:05 x
iza-nagiさん
このガスタンクの昭和27年撮影の写真をその後見る機会を得ましたが、当時は球形ではなく、円柱形でした。
昔は円柱形のほうが多かったように思えるのですが、記憶違いかな。
「最も下品なものを最も美しく描く」……スゴい話です。
人間ワザではないですよね。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:06 x
haru-155さん
ありがとうございます。ようやく今日あたりから復活しました。
この写真、実はちょっと後悔しているのです。
時間帯が早かったかな、と。
もう少し待てば、ガスタンクの向こうから夕日が輝いていたはずなんですよ。
でも、この日は北風が厳しく、1時間と待てませんでした。
Commented by マフィンマン at 2008-02-24 19:07 x
korotyan27さん
昔の玉の井や吉原を現代に例えると風俗街なのかな、とも思えそうですが、荷風先生は雑沓と騒音が嫌いだったので、結局すべて「失われた色街」と言えそうです。
お気遣い、ありがとうございます。
今日の昼過ぎあたりからようやく復調しました。
それでも、一昨日は泊まり勤務をこなしたんですよ。キツかった~
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