西新宿  『 やすこ 』 が消えた

12年間支えられ可愛がっていただきましたが、この度、開発退去の為、7月29日にて閉店させていただきます  ありがとうございました
お客様各位  やすこ

再開発が進む西新宿8丁目の元・飲み屋です。界隈では、こんな貼り紙を至る所で見かけます。
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閉店のことを何も知らず、半年ぶりくらいに訪れた客は驚いたろうね。会社の送別会だったりしたら、目も当てられない。例えば、こんな感じ――。
        ×        ×        ×

雑派商事・西新宿営業所の田中さん(60)は、めでたく本日、定年を迎え、なじみの居酒屋で送別会が行われた。アルバイトの紅一点エリちゃん(21)から花束を手渡され、照れ笑いを浮かべる田中さん。小所帯ながら職場を束ねる山田所長(48)も、型通りながら挨拶して、労をねぎらった。
定刻通りに会は終了し、さあ2次会はどうしようか、そう言えば決めてなかったな、と幹事役が迷っていると、山田所長が、
『 オレの店に行くか。ボトルにまだいっぱい酒残っているはずだ 』
ふだんは一人だけで飲みに行き、『 オレ流・男の隠れ家 』と心中密かに得意がっていた、西新宿8丁目のあの店。でも、今夜は田中さんの特別な日だ。隠れ家を開放して、お祝いしよう。
あ、しまった。前に行った時、酔った勢いで、名前代わりにボトルに『 新宿夕焼け番長 』なんて書いちまった。

ところが、みんなを引き連れ、数カ月ぶりに界隈を訪れると、あたりが暗い。ひと気もない。そうして、店の前まで来ると、『 閉店 』の貼り紙が……。山田所長、驚いて、別の店を探すが、ここも閉店、あそこも閉店。
やがて、田中さんは、
『 店も閉店、私も閉店か。ははは 』
と、乾いた笑いを残しつつ、暗闇の路地に一人消えていくのだった。悄然と立ち尽くすしかない山田所長以下数名。
その時、エリちゃんがハッと顔を上げて、言った。
『 所長のボトル、どうなっちゃったんでしょう?! 』
山田所長は思った。
どうでもいいよ。
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by muffin-man | 2006-10-23 20:17 | 新宿/渋谷/原宿 | Comments(20)
Commented by lucca-truth at 2006-10-23 21:46
こんばんわ
西新宿8丁目再開発が一気に進んでいるのですね。
緑色のドアに黄色の壁、影とコードときれいなだけに
余計にさびしげな物語ですね。
開発退去という張り紙もさびしそうですね。
Commented by aoi_color at 2006-10-23 22:40
寂しがってばかりではいけませんね。
何があっても前に進まなくちゃ。
みんなで南へ移住しましょう。
あっ! それからそのボトル私がいただきます(笑)
Commented by nobulinn at 2006-10-23 22:45
黄色い壁とグリーンのドアーが美しくて、目をひきます。
このお店はどこかに移ってまた開くにしても、この場所からなくなってしまうのは寂しい感じがしますね。
Commented by tabasco-x at 2006-10-23 23:24
黄色の壁が最高ですね~~
コメントおもしろかったです!(^^)!

Commented by korotyan27 at 2006-10-24 00:03
色の寂れ具合、ツタの跡、壁の色、そして店主の達者な筆跡・・・。
きっとまっとうに12年間営業されたお店だったのでしょうね。
チェーン店ばっかりじゃつまらない街になっちまうぜっ!
多様化していた日本の風景は何処に行ってしまうのでしょう?
一軒の飲み屋ではありますが最近切に思います。
Commented by igu-kun at 2006-10-24 00:49
営業していた頃はステキなお店だったのでしょうね。
常連さんも多かったことでしょう。
お写真、ステキな切り取り方です。
そして哀愁たっぷりのコメントが泣かせます。
Commented by 風俗散歩 at 2006-10-24 06:30 x
店の名前が「やすこ」という女性の名前なので、哀愁を感じます。田中さんが通っていたこのお店には、なじみの従業員かホステスでもいたのでしょうか。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:25 x
lucca-truthさん
閉店の貼り紙だらけの飲み屋の中で、この色合いから、この店だけ目立っていました。それだけに、 『ありがとうございました』 の文字も一層寂しく……。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:27 x
あおいさん
こういう時のボトルはどう始末するんだろう、と撮りながら思いました。店の最後の夜までに、客の全員が飲み尽くすってこともないだろうし……。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:29 x
のぶりんさん
移転の予定があるのなら、貼り紙に書いておくと思うのですが、それらしい表示はありませんでした。経営者は、水商売から完全に足を洗ったか、浪人中か……。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:33 x
tabasco-xさん
山田所長(48)は、田中さんを不快にさせただけでなく、 『オレ流・男の隠れ家』 も失い、弱り果てています。次なる隠れ家を見つけることが出来るのか?!――期待しないで 『続き』 を待っていて下さい。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:38 x
korotyan27さん
ある年齢に達すると、 『我が心の飲み屋』 なんてのが出来てきます。いくつもの夜に通った、あの店。次回は、おいら自身が通った飲み屋について、掲載します。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:40 x
igu-kunさん
そうなんですよ、現役時代はきっと洒落た店だったんだとおいらも思います。写ってませんが、店の庇の上は一面ツタがからまっています。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 07:43 x
風俗散歩さん
飲み屋の魅力って結局、酒の味でもツマミでも内装でもなく、店主やそこに集まる連中なんですよね。次回は、 『我が心の飲み屋』 を掲載させていただきます。
Commented by Rambler5439 at 2006-10-24 07:55 x
いつか灯りの点ったこの店を撮ろうと思っていたのですが、果たせないうちに閉店となってしまいました。東京の街撮りに「そのうちに」は許されないのですね。
かつてこの店の前で"やすこ"さんとおぼしき50代後半の女性が、初老の女性とヒソヒソ話をしているのを見かけたことがあります。これからどんな人生を送るのでしょうか。"東京流れ者"の歌詞が脳裡をよぎります。
Commented by rrb at 2006-10-24 09:26 x
おはようございますm(..)m

12年ですか…家屋という観点からすれば長いようで短いですよね。
再開発という名のもと、実態は計画性のない生活圏の解体だっだり、
ひとりの人間の思いだけで決議されてたりするのでしょうかねぇ?
再開発で立ち退いて、新天地へ移住したのはいいけれど、
自治会にも馴染めず孤立した状態になる…よく聞く話です。
「向こう三軒両隣」その関係を解体するのが、再開発ではないか…。
と考えてしまうなぁ。
Commented by jitensya7 at 2006-10-24 21:53
諸行無常、生生流転ですね。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 21:56 x
Rambler5439さん
>いつか灯りの点ったこの店を撮ろうと思っていた
おいらも、扉のガラス窓を見た時、 『あ~、これは店がまだ営業していた夜に撮るべき被写体だった!』 と思いました。店の明かりが扉の緑や壁の黄色にボンヤリ反射して、いい絵が撮れたと思います。悔やまれますね。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 21:58 x
rrbさん
飲み屋1店の寿命ってどれくらいなんでしょうね。 『水商売』 というくらいだから、決して長くはないと思うんですよ。10年以上続けばいいほうなのかなあ。この店、最後の夜はどんな宴だったのでしょうね。
Commented by マフィンマン at 2006-10-24 22:01 x
jitensya7 さん
閉店後も、どこかに移転して営業を再開する店もありますが、中には、以前の雰囲気と違って、どこか居心地が悪い、という思いをしたこともあります。妙に立派になっていたりすると、なぜかガッカリするのは客の勝手な思い込みなんでしょうかね。
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