秋葉原  馬場君がこだわった高架下

中学時代、友人のラジオ少年・馬場君とアキバに行く時は、なぜか御茶ノ水駅で降り、中央線を左手に見ながらテクテク坂を下り、昌平橋を渡って行きました。そうして、総武線の高架をくぐります。
馬場君には、理解できないこだわりがありました。
『ほら、頭の上にガアーッと電車の音を聞くと、さあこれからいよいよ秋葉原の心臓部に向かうぞって気分が盛り上がるだろ?』
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《 憧れの2000GXワールドボーイ ② 》 ※ ①は、こちら
玄関先に現れた馬場君は、おいらが、『ワールドボーイ購入』の大ニュースを告げようとするが早いか、
『これ、作ったから、あげるよ』
と、アクリルの箱をおいらに手渡した。研究社新英和中辞典とほぼ同じ大きさだ。
ラジオだった。基板やコード、磁石みたいなものが透けて見える。正面のスピーカーの横には、これも自ら作ったのか、『2001GX世界少年』と小さく書かれたレリーフが貼ってあった。ワールドボーイだから、『世界少年』。そして、2000GXの上をいくという意味の、 『2001GX』。
『ワールドボーイの代わりにはならないけど、結構苦労したんだ』
スイッチを入れると、♪ダイヤル、ダイヤル、ダイヤル、ダイヤル……と、クリアな音でTBSの全国こども電話相談室が聞こえてきた。他のAM局だけでなく、FMも明瞭に受信した。完璧だ。アクリルのラジオには、馬場君の洒落っ気とプライドが詰まっていた。
『ラウドネス機構も採り入れたけど、低音は本物にかなわないな』
言いつつ、馬場君は得意げだった。おいらは、
『へえ~、スゲえな。馬場君、スゴいよ。やっぱり、天才ラジオ少年だよ』
そう答えるのが、やっとだった。あとは、どんなやり取りをしたのか、まるで覚えていない。
小遣いが何とか貯まりつつあることをひた隠した、おいら。何てこった。ピカピカの2000GXワールドボーイを突然見せびらかして驚かしてやろう、なんて考えるんじゃなかった。
買ったばかりのワールドボーイのことはついに話せずじまいで、ウチに帰った。

中学卒業後、馬場君とは別々の高校に行くことになり、疎遠になった。20歳を過ぎたころ、馬場君は引っ越した、と同級生から聞いた。転居先は誰も知らなかった。
馬場君、ごめんよ。アクリルラジオは2、3回スイッチを入れただけで押し入れにしまい、そのうちにどこかに行っちゃったよ。
ワールドボーイ? 北海道に単身移り住んだ際も持って行ったけれど、その後、何度か引っ越しているうちに、やっぱり行方不明になっちまった。

アキバに行くと、今でも馬場君を思い出す。ラジオセンターでパーツをためつすがめつ選んでいる中年男を見ると、『ひょっとして』と。 (終わり)
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by muffin-man | 2006-10-03 22:16 | 秋葉原/神田 | Comments(20)
Commented by igu-kun at 2006-10-03 22:29
昌平橋から総武線の高架にかけての風景、自分も好きです。
自転車でアキバ〜お茶の水へ行く時は必ず通るポイントです。
今回のお写真拝見して、久しぶりにペダルを漕ぎたくなりました!
Commented by Rambler5439 at 2006-10-03 23:18 x
馬場君はきっとどこかのメーカーで、こつこつやってるような気がします。ぼくの知ってるラジオ少年たちは、どちらかと言えば世渡りが下手ですが、世の中うまく出来ているもんで、まっとうに生きている人間はそんな世渡り下手な奴を愛おしく思ってくれます。だから、けっこう幸せにややってる。そう信じたいですね。
Commented by nobulinn at 2006-10-04 00:28
まるで、物語を読むように、楽しませていただきました。
なんだか、男の子っていいなあと思いました。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 06:24 x
igu-kunさん
先週末の日中に昌平橋を通ったら、行列が出来ているので驚きました。橋のたもとにある、まぐろか何かの海鮮屋でした。昌平橋と行列……なかなかミスマッチです。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 06:26 x
Rambler5439さん
ラジオセンターと言っても、おいらはただ眺めるだけなので、どういう需要があるのか全く分かりません。パーツ類をジッと選んでいる“ラジオおやじ”たちは、何を作ろうとしているのか、不思議でなりません。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 06:32 x
のぶりんさん
中学男子ってのは、背伸びしたいのだけど、脳みその半分はただの“お子ちゃま”なので、間抜けで滑稽な動物ですよね。たぶん、人生で最もおバカな日々が中学時代だと思います。我が身を振り返っても……。
Commented by lucca-truth at 2006-10-04 07:17
おはようございます
総武線の高架、これも秋葉原の象徴ですね。
聖橋からの電車の風景も好きですが、秋葉原のこの光景もいいですね。
今でもラジオセンターにぎわっているんですね。
Commented by 風俗散歩 at 2006-10-04 07:41 x
第二話登場ですね。昌平橋という名前だけは聞いたことがあったのですが、この近辺なのですね。
たしかに、総武線の秋葉原周辺の高架は、いいですね。高さがあるためでしょうか。
Commented by rrb at 2006-10-04 10:12 x
おはようございますm(..)m

なんともいいお話ですね。ウルッときました。
会いたいですね…馬場君。
どの空の下にいるのでしょう!?
Commented by しう at 2006-10-04 11:39 x
コメントありがとうございました。
すてきな写真と、それぞれコメントが楽しくて、読んでしまいますね♪
脱力系では、こんな写真も載せています(^^;
http://blog.livedoor.jp/siu_ms06s/archives/50049541.html

またぜひ、お立ち寄りくださいませ☆
Commented by medkid at 2006-10-04 13:08 x
おぉー、なかなか下から撮ると迫力ありますね。
若くてお金が無かった頃の方が好きなものを買うことが楽しかったような気がしますよね。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 21:05 x
lucca-truthさん
聖橋からの風景、いいですよね。この昌平橋から見たお茶の水方面の水辺の風景も、東京っぽくてイケますよ。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 21:08 x
風俗散歩さん
JRの高架は、アキバの街にアクセントを与えてますよね。また、新しくできたUDXビルの2階テラス部分からは、秋葉原のホームが見渡せます。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 21:11 x
rrbさん
同じラジオ少年でも、おいらは聴く専門で、メカはさっぱりでした。でも、ラジオセンターの空気は今でも大好きです。ルーツは戦後の闇市だそうで、そう言えば、そんな感じなのです。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 21:13 x
しうさん
ようこそお越し下さいました。ブログ上では、色んな人が色んな東京や近郊を撮っているので、ホント、楽しいですよね。
これからもよろしくお願いします。
Commented by マフィンマン at 2006-10-04 21:17 x
medkidさん
鉄橋みたいな高架って、味がありますよね。この“むき出し”感がたまりません。いくつも穿たれた鋲も好きです。
Commented by laugh7 at 2006-10-05 08:09
おはようございます
完結編、すっきりしました、これから先何処かで出会って
続編になると嬉しいですね~
いつものように明るく撮る夕暮れ、まだ真似ができませんね
Commented by マフィンマン at 2006-10-05 21:06 x
laugh7さん
今日び、ラジオ少年なんていないんでしょうね。パソコン少年かな。でも、それならラジオ少年の100万倍はいそうですしねえ。などと考えると、つまらん世の中になりましたね。
Commented by korotyan27 at 2006-10-08 00:37
2001GXってネーミングにHALを超えたいとう馬場くんの
IBMのような志を感じますね。いい話だ~。
私の時はすでにラジオからパソコン、ゲーム、そしてアニメなどになり、
めまぐるしく変わっていく文化、技術系男子の街ですがこのような
思春期のドラマがいまでも数多く展開されているのでしょうね。
Commented by マフィンマン at 2006-10-08 06:54 x
korotyan27さん
秋葉原は今でこそ、アニメ小僧らも含め若者の街と化していますが、70年代なんてまだまだ『おやじの街』でした。それも、白もの家電などを買いに来る人を除けば、ちょっと変わったおやじたち。今のように情報のやりとりなどほとんどないまま、馬場君たち技術系男子は、あの街で孤軍奮闘していたのですね。
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