赤羽  80近いけど行っちゃうよ

この写真とは全く関係ない話をば、ひとつ。
前回アップした 「北区・子どもの水辺」 の撮影を終え、帰り支度を始めたその時、声をかけられました。
「いい写真、撮れたかい?」
↓ 下に続く ↓
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見ると、老人が電動アシスト自転車にまたがっている。
前のカゴには小さなブルドッグ。
うしろのカゴは迷彩柄の布で覆われ、隙間から、望遠レンズとキヤノンの真っ赤なストラップが見えた。
野鳥を撮っているアマチュアカメラマンのようだ。
ここ荒川河川敷でも、場所により愛好家を見かける。
おいらのことを同好の士と思ったらしい。
だが、生憎にも、おいらはネイチャー野郎ではない。

何と答えようか。
言いよどんでいると、じいさんは、
「これこれ、これ見てよ、兄さん」
と、カゴからぶ厚いアルバムを取り出した。



それは、これまで撮り貯めた野鳥の写真で、美しい出来映えのものもあれば、見るも無惨なピンボケ写真もある。
自慢話が始まりそうだ。
参ったなあ、寒いから早く帰りたいのに。
ほら、ページを繰りながらご高説が始まった。
「ほう」 とか 「きれいですね」 と、テキトーにうなずくばかりの、おいら。

が、やがて、数枚の写真を前に、言葉に詰まった。

いかにも獰猛そうな焦茶色の鳥が、真っ白い鳥をくちばしでくわえている。
体長に差はなく、2羽とも同じような大きさだ。
焦点は、焦げ茶色の鳥の瞳にロックオンされている。
何だ、この写真は。
「あ、それ? ハイタカがカモメを捕まえた瞬間。 このへんで撮ったの」

このへん?
くどいようだが、ここは荒川河川敷。
それも、近くの鉄橋で京浜東北線などが四六時中走っている場所だ。
住所で言えば、一応、赤羽。

なのに、タカだって?!

じいさんはもう何度も説明し慣れているのか、ハイタカの生態を要領よく教えてくれた。
文字通りタカ科で、漢字で書くと、「灰鷹」。
「カモメを捕まえても、すぐには食べない。 ねぐらに飛んでいってゆっくり味わうんだよ」
ねぐらは河川敷ではなく、マンションの屋上など人けのないところを選ぶという。

その一言一言に驚くが、何より仰天したのは、写真だ。
こちらを真っ直ぐ見つめるハイタカ。
鋭い瞳は、獲物を捕られまいとする警戒心だけでなく、殺意そのものをまだ宿しているかのようだ。
これぞ決定的瞬間。
これぞリアリティの塊。
構図や露出なんて屁理屈は、どこかに吹っ飛ぶよ。

やられたね。 完全にやられた。
写真は被写体選びがすべて――と、常々思っていたが、まさにそんな写真を目の前で見せつけられると、降参だ。
あ、いや、じいさんとケンカしているわけではないが。

それだけではなかった。
自転車のカゴには三脚も一脚もないのだ。
長筒を、いつも手持ちで撮影するという。
あり得ない。

こうも言った。
「 (年齢は) もう80近いけど、河口まで行っちゃうよ」

おいおい、電動アシスト自転車がいくら楽チンとは言っても、バイクとは違う。
自走はしない。 ペダルを踏み続けなければ、動きはしないんだぜ。
自宅は赤羽というから、河口までは軽く往復40キロを超す。
なのに、かなりくたびれた自転車。
肝心のバッテリーは大丈夫なのか。

的確に被写体を見定める 「眼力」。
長筒付きのカメラを支え、シャッターを素早く押す 「腕力」。
さらに、河口までフンフンと軽く往復してしまう 「脚力」。
この総合力こそが、「撮影力」じゃないか。

薄汚れたジャンパーに、泥が乾いて浮いたズボン、毛羽立った手袋。
そして、前カゴには小さなブルドッグ (おいらをジッと見つめている)。
これでどこまでも行く、と70代後半のじいさんは笑った。
カジュアルすぎる。
不敵すぎる

まったく、ロードバイクでちんたら走ってる場合じゃないよ、おいら。

※ ハイタカについては、この記事に多少詳しく書かれています。 主食は鳥類、だそうです。
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by muffin-man | 2011-01-07 23:05 | 荒川 | Comments(14)
Commented by idokichi at 2011-01-08 19:22
御無沙汰、おめでとうさん。
久しぶりにコメ欄が開いたね。
面白い記事だった。
Commented by @てつ at 2011-01-08 21:52 x
いやぁホント久しぶりですね、コメント入れるの。
おめでとうございます。本年も宜しく。

しかし「タカ」とは大スクープというか…
アタシも技術がないのでインパクトある被写体を日々探してますが
老後が悠々自適のジイサンのようには金もヒマもないのでなかなか…
貧乏人は食うだけで精一杯で健康管理まで手が廻らんですし。
Commented by neon at 2011-01-10 14:54 x
それは、ジイさんにがつんとやられましたねぇ。
何でもそうですが、屁理屈言ってるうちは駄目ですよね。
マフィンマンさんの今年の写真に期待しますよー。ガツンとお願いします。
Commented by haru-155 at 2011-01-10 22:35
今晩は!
お久しぶりですね!
相変わらず、風のように愛機に乗って散策されてますね♪

なんだかすごくいいお話だな~って思ってつい書き込みさせていただきたくなりました。。
年を取ると不幸を顔に張り付けてしまったような方々も中にはいる。。
趣味を持って、楽しさ、ワクワク感をいつまでも持って生きていけたら最高ですよね♪

趣味で、眼力、体力、腕力、気力鍛えているから、長球を持って、40キロサイクリングできるのかも。。

そこまではできませんが、、でもカメラを持って、そういう元気なばあさんになって、いけたらいいな~などと、感慨深く読ませていただきました。。
Commented by korotyan27 at 2011-01-12 00:03
こんばんは。
遅ればせながらあけましておめでとうございます。
先日、鐘ヶ淵から荒川の土手に降りてみました。
荒涼とした光景に改めて東京の広さを感じました!
そういえば、地元のお祭りで鷹を飼育しているおばさんが散歩していて
驚いたのを思い出しました(何故?)街歩きもそろそろ再開したいところです。
とりあえず今年もよろしくお願いします。とりあえず新年会ですかね(^^;)
Commented by マフィンマン at 2011-01-12 09:59 x
idokichiさん
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
写真を撮っていると、いろんなじいさんに話しかけられます。
話しかけられやすい風貌なのでしょうか。
Commented by マフィンマン at 2011-01-12 10:00 x
@てつさん
こういう老人と話すたびに必ず思います。
おいらがじじいになっても、こんなに余裕はない。羨ましいぜ――と。
それにしてもタカ、いまだに信じられません。
荒川河川敷は何度も何度も通っているのですが……。
Commented by マフィンマン at 2011-01-12 10:01 x
neonさん
ただ、ですね。
本当にタカが荒川河川敷に生息しているのか、実はまだ信じられないのです。
何度も河川敷を通っているのに、今まで見たことがありません。
それに私、この年齢と風貌で、他人様に欺されやすいという得意技があるようなのです。
Commented by マフィンマン at 2011-01-12 10:01 x
haru-155さん
いやあ、ホント、ごぶさたです。
そうなんです、眼力も腕力もまだまだみなぎっているじいさんでした。
それは根本的に大なり小なり、「資力」に支えられているからこそ、とも推量します。
その意味で、大変羨ましい老人でした。
Commented by マフィンマン at 2011-01-12 10:02 x
korotyan27さん
鳩もスゴいですよ。
勤め先には大昔、伝書鳩を飼育・管理していた部署があったそうです。
伝書鳩の足首には、早慶戦@神宮や、チャップリン来日@横浜などの写真がくくり付けられて、本社まで飛ばされました。
もっとも、時には途中で行方不明になる鳩もいたという……。
Commented by d3_5d2 at 2011-01-12 21:24
あけましておめでとうございます!
僕なんかバイクで20分乗るだけで疲れてしまうのですが。。。
すっごいおじいさんがいるものですね。
モツでスタミナをつけよう。。。 今年も宜しくお願いします!
Commented by koumonomio at 2011-01-12 21:31
出遅れましたが、今年もよろしくお願いいたします。
久しぶりにコメント欄が開いたので見落としてしまいました。
とても興味深いお話ですね。
仕事も趣味も極めようとすれば、年齢に関係なく楽しむことが出来るのでしょうね。
Commented by マフィンマン at 2011-01-14 18:49 x
d3_5d2さん
実はこの数日後、じいさんと河川敷で再会しました。
今度は、ハヤブサの話を聞かせもらいました。
板橋区内に生息しているそうです! 何から何までスゴいじいさんです。
モツ焼き? モツ煮込み? どちらも大歓迎です。また飲りましょう。
Commented by マフィンマン at 2011-01-14 18:49 x
koumonomioさん
ご無沙汰しておりました。明けましておめでとうございます。
じいさん、スゴすぎです。
それっぽくカメラマンベストを着込んだり、いかにも高価な三脚を携えてなどいません。
その何気なさというか、カジュアルぶりが素晴らしいです。
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